肥満や糖尿病,喫煙などの生活習慣から動脈硬化となります.脳の動脈硬化からおこる脳梗塞や,心臓の動脈硬化からおこる心筋梗塞は,死に至ることもある恐ろしい病気です.では,同じ動脈硬化が足の動脈におこるとどうなるでしょうか.
以下の項目に思い当たるものがひとつでもあったら,閉塞性動脈硬化症(ASO)の可能性が ...
1. 最近,歩くのがおっくうになった,つらい.
2. 休まずに歩ける距離が短くなった.
3. 歩くと足の筋肉が痛くなる.特に坂道や階段を登る時に痛む.
4. 足がいつも冷たく感じる.
5. 左右の足の色が違う.
生活習慣病から動脈硬化になり,足の血管が狭くなったり詰まってしまうことにより,足を動かすのに必要な酸素が十分に運べなくなって起こる病気です. 動脈硬化は,足だけでなく全身の血管で起こります.そのため,進行すると血管の壁が厚くなって,血管の中が狭くなったり,血液の固まりが詰まって,脳梗塞や心筋梗塞なども発症しやすくなります.
動脈硬化が進行すると,歩くとふくらはぎの筋肉に痛みが出現するものの,立ち止まって休憩すると痛みがなくなって,またしばらく歩けるようになる「間歇性跛行」という症状が出現します.更に進行すると,じっとしていても足先が痛む「安静時痛」や皮膚のただれである「潰瘍」,足先の皮膚や筋肉,骨などが血流不足のため酸欠になり死んでしまう「壊死」などの症状が出現します.
安静時痛や潰瘍・壊死はまとめて「重症虚血」と呼ばれ,動脈が詰まってしまうことにより発症します. 詰まりを直して,血液を充分に足先まで流すような処置を行わない限り,足を切断しなければならなくなる危険が非常に高い状態です.
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欧米での調査によりますと,重症虚血に陥った患者様は,1年後に25%はお元気にお過ごしですが,25%はお亡くなりになり,30%は具合の悪い足を切断され,20%は重症虚血の状態のままお過ごしになっているとのデ−タがあります.
重症虚血に陥る危険因子(原因)としては,未治療の糖尿病と喫煙が最も大きく,高脂血症や高齢(85歳以上)なども挙げられています.
ASOが疑われたら,どんな検査をするのですか
まずは,触診(足首など),視診(皮膚の色)による診察を行います.閉塞性動脈硬化症(ASO)が疑われる場合には,次の無侵襲検査 (皮膚を切ったり放射線を使用しない検査.あまり痛くない) を行います.
1.足の血圧測定
足の血圧脈波を測定します. これにより血管の硬さを測定することができ,おおまかな血管の年齢を調べることができます. 動脈硬化の進んでいる方などは,血管年齢が高いといえます. |
2.歩行検査
トレッドミルを用いて,歩行時の身体の様子を検査します. トレッドミル上で歩いて頂いて,何分歩き続けることができたか,どのくらいの距離歩くことができたかなどを測定し,血管の様子を調べます. トレッドミルについての説明はこちらをご覧ください. |
上記の無侵襲検査で血管の病気があると判断された場合には,必要に応じて次のような検査を行います.
1.造影CT検査
造影剤を注入しながら,CT(コンピュータ断層)検査を行います.血管の詰まった部位,狭くなった部位を評価できます.検査時間は10分程度です.
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2.MRI検査
磁気を利用して,血管の詰まった部位や狭くなった部位を画像にする検査です.検査時間は30分程度です.造影剤がなくても検査できる利点があります.
3.血管撮影
カテーテル(細い管)を腕の血管から入れて,造影剤を注入しながらレントゲンをとります.血管の病気を評価できる最も精密な検査です.検査時間は40-60分程度です.
1. 生活習慣病の改善
まずは,自分でできて,しかも一番重要な治療法をしましょう.それは生活習慣の改善です. 生活習慣の改善で,動脈硬化の原因をなくしましょう.動脈硬化は徐々に進みます.この段階で見つかった方は幸運です.原因をなくして進行を抑えましょう.
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- タバコを吸っている方.まずは禁煙です.これができないと他の治療をしても無意味です.タバコをやめられない方は足壊疽に進む危険性が大きいです.
- 肥満の方.まずは歩きましょう.膝が痛い方は,プールでの歩行がよいでしょう.
- 高血圧症の方.やはり歩きましょう.適度な運動により汗をかいて血圧を下げることができます.降圧剤でしっかりコントロールすることも大切です.
- 糖尿病.歩くことが血糖コントロールに重要です.長い距離が歩けない方は,血管検査を受けましょう.専門家に通院してHbA1cを7.0%以下としましょう.
一日 8000歩を目標に歩きましょう. あまり歩けない方は,まずは現在の歩数を知りましょう.万歩計が便利ですが,歩いた時間を記録するのでもよいでしょう. 手術を避けたい方は,是非ともしっかり歩きましょう.3. 内服治療
効果のある飲み薬がありますので,血管外科専門医と相談して薬をしっかり飲みましょう.
運動療法と飲み薬を3-6ヶ月続けても効果がない場合は,血管内治療や手術を視野に入れて医師と相談してください.
4. 血管内治療狭いところや詰まっているところをバルーン(風船状の手術器具)で拡げる治療です.下腹部の動脈(腸骨動脈)や太ももの動脈(大腿動脈)が狭い場合や,詰まっている場合に,この治療が適用されます.
特に下腹部の動脈(腸骨動脈)では,狭くなるのを予防するためにステント(金属でできた網目状の筒)を使用する場合があります.5. 手術
血液を足先に供給できるような処置が行われなければ,足を切断しなければならなくなる可能性が高い場合,切断を免れるためには「血行再建」が必要です.
「血行再建」は,従来はバイパス手術による方法しかありませんでしたが,最近では,動脈の内側から「バルーン」(風船)付きの「カテーテル」(細い管)を,動脈の細くなっているところに通して,細い部分を風船で広げる「血管内治療」と呼ばれる方法が発達してきていて,必ずしも手術しか方法がないわけではありません.但し,10cm以上長い範囲で動脈が詰まっている場合には,血管内治療ではうまく治療できない場合が多く,病気の状態によって治療を使い分ける必要があります.
血管内治療では通常,2泊3日程度の入院で行えますが,バイパス手術の� ��合には2-3週間の入院治療が必要となります.足先に「潰瘍」や「壊死」がある場合には,その範囲によって,更に長い入院期間が必要になります.
バイパス手術は,「代用血管」を使って,動脈の詰まっている部分をバイパスして足先まで血液が流れるようにする手術です.「代用血管」に用いられる材料としては,「人工血管」と「自家静脈」が主なものです.
人工血管は「ダクロン」「ゴアテックス」といった繊維で作られた管で,充分な耐久性があります.自家静脈は,ご自身の足の静脈を動脈につなげて動脈の代わりに血液を流します.足の静脈は1本なくなっても他の静脈を通って血液が充分に流れます.手術の影響で一時的には足がむくみますが,血液の流れが悪くなることはありません.
一般的に胸や腹の太い動脈のバイパスには人工血管が用いられます.太腿の動脈のパイパスには,状況に応じて人工血管が使用されることも自家静脈が使用されることもあります.膝より下の動脈へパイパスを行うときは,人工血管と比較して自家静脈を使った方が,バイパスが詰まってしまう確率が圧倒的に低いため,できる限り自家静脈が使用されます.
右の図 : 糖尿病で血液透析も受けている患者様の左足部.他の医療施設で壊死した左親指を切断されていましたが,傷が治らないで潰瘍になっていました.左足の人差し指,中指は皮膚が壊死に陥っていて黒色になっていました.他の医療施設では,膝下での切断を勧められていました.
右の図 : 同じ患者様の治療後の写真.バイパス手術をした上で,壊死に陥った指は切断せざるを得ませんでしたが,踵を含めて足が残りました.
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